~全てを失う男~Vol.4
電車を乗り換えて、自宅がある中央区の某駅でおり、そのまま真っ直ぐ帰宅すると思いきや、自宅とは反対方向に歩きました。
まず、彼が立ち寄ったのは、ドラッグストアー。
そこで、トイレットペーパー、ミネラルウォーターを買って、店を出るとオリジン弁当に。
オリジン弁当といえば、出来立てのホカホカのお弁当。
ところが彼が買ったのは、既に出来上がって置いてあるお弁当。
出来立てのお弁当より安くてお手軽な弁当です。
オリジン弁当から、すぐに出て来て、今度は真っ直ぐ自宅方向に歩いて行きます。
僕らは彼の尾行を続けましたが、
ふと…その彼の後ろ姿を見ていて、何とも言えないような淋しさを感じたのです。
…ああ…っ …と思いました。
彼が何で離婚したのかは知らないけれど、もともと彼は会社を裏切って私腹を肥やす事など、したくなかったのかも…
けど、離婚して あのマンションに一人…住宅ローンだって払わなきゃならない。
それから、きっと慰謝料も払わなきゃならない…
そして、もしかしたら奥さんに引き取られていった子供たちに仕送りをしているのか…或いは、まだ未成年で養育費を払っているのかも知れない…
何故、僕がそんな風に思ったのかというと、彼の行動には全く派手さがなかったからです。
その淋しさが、背中にハッキリと見えたような気がしたのです。
何があったのかは知らないけれど、本来はそんな人間ではなかったのかも知れず、何かがあったとしたら、魔がさしたのか…。
けど…現在を作ったのは過去であり、そして今という現在が未来を作り、その未来は現在となって、
その現在は、過去が作る…。
とにもかくにも、彼は過去の何かが原因で離婚をし、そして転職…
そして、それらの過去が彼が会社を裏切らざる結果を生み、
…彼の今は、この後、僕らの調査報告によって会社を解雇されるという未来が待っているのです。
現在、起きている事が、過去に原因しているという事を反省して、未来のために今をしっかりと生きられたら、きっと誰も未来に悩みなど持たないのに…と、
わかっちゃいるけど、誰でも起こり得る事ですよね…
(おしまい)