こんな依頼ありました「骨折すると痛い」6 最終章(前編)

こんな依頼ありました「骨折すると痛い」6 最終章(前編)

いうまでもないが、さっきからの一部始終は撮影してある。

でも、何度も言うが、これは浮気調査。

女が泣き崩れ、本人が宥めるように女の腰を抱きしめ、2人でスナックに入った。

前にも何度も言ったが、、父親が娘を宥めているような雰囲気ではない。そうは言っても、これは私の主観であって、本人の意思には関係ない。

きっと本人はこういうだろう。

「お前がエロい事ばかり考える人間だから、そういう解釈をするのだ。私とお前を一緒にするな。私は単に悩んで悲しんでいる知人である女性を宥めていただけだ。」と。

 

◇    ◇    ◇    ◇

 

つまり、どうやったって不貞の証拠とは言えないわけだ。

というわけで、依頼者から帰宅までやって欲しいと言う事になってしまった。ホテルや女の家に行かず、別れた場合は女の自宅を割って欲しいというもの。

そうやって張り込みは続いたが、全くもって出てこない。

本人と女が出てきたのは、既に日にちが変わった翌AM1時半過ぎだ。

これでタクシーにでも乗って帰宅、と思いきや、ビルの一階にあるラーメン屋に入ったのだから困ったものだ。

疲れた。異常に疲れた。何故にこんなに疲れているのか?

そりゃあ、いろんな事があって、それも肉体的というよりは、精神的なところが大きい。

でも、誰かが言ってたっけ。肉体の精神はひとつだと。精神的に疲れれば、肉体にも影響するという事なのだろうが、それは今身にしみる。

 

◇    ◇    ◇    ◇

 

さらには、やはりタイから帰国したばかりというのも影響があったに違いない。

とにかく、疲れている。

でも、あともう少し。流石にラーメン屋から出てから、梯子はないだろう。あとは最低でも女をとことん追えば良いのだ。

サクッとラーメン屋を出てくれれば良いのだけど、私をがっかりさせたのは、店内でまたビールを飲んでいた事だ。

いつまで飲む気だ

それでも、本人と女は午前2時半には店を出てくれた。

やったもうすぐだぞ。

2人は、ゆっくりとした足取りで駅のロータリーに向かって歩いている。

タクシーだな

 

◇    ◇    ◇    ◇

 

当然、電車は終わってるから駅に向かう理由はタクシー乗り場という事だから。

私は最後の力を振り絞って、バイクを押してロータリーの後方路肩に移動した。

T君の車は、私よりも後方にライトを消して待機している。

「いまタクシーに乗ります。」私はT君に電話をかけて言った。「2人で乗ったので、最終的には女です。宜しく。」

「わかりました。」

2人の乗ったタクシーが、金町駅のロータリーをゆっくりと出て、水戸街道方面に向かった。

私はバイクのライトを消したまま発進して、距離を取って尾行を始めたが、車の往来がある程度ある通りに出たところでライトをつけた。

 

◇    ◇    ◇    ◇

 

T君の車は、私の後方からついてくる。

本来なら、車の方が前に出てもらって、バイクはその後ろに隠れるように追尾するのが普通だが、なかなかT君は私の前に出てこない。

失尾されるのが嫌だったし、相手はタクシー。しばらくは大丈夫だと思って、バイク先行で尾行を続けた。

タクシーは水戸街道に出て、松戸方面に進行した。

この辺りで車に前へ出て貰おうと、サイドミラーをチラッと見て、私は驚愕した。

 

何故なら、T君の車のベッドライトがハイビームになっていて、追尾しているタクシーを眩しく照らしていたのだから。

 

 

~次回につづく(2021/12/02頃 掲載予定)~

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