こんな依頼がありました…特別編〜危険な依頼〜vol.2

~危険な依頼vol.2~

 

街宣車の尾行は、やはり厳しい…

その後、どうするのかと思って元請けからの連絡を待ちました。

しかし、割と早い段階で、その連絡があったのです。

その街宣車の実行に携わっていると思われる、依頼会社の元社員がいるというのです。

その元社員は、以前依頼会社の寮に住んでいて、まだ彼の荷物が寮にあるので取りに来させる事になったそうです。

次の作戦は、その彼を尾行して、彼ら実行部隊のヤサ(潜伏先)を突き止めるという事になったのです。

果たせるかな。

要するに一発勝負です。

板橋区の某所。

僕らは調査車両とオートバイを用意して、依頼会社が指定した時間に張込みを開始したのです。

時刻は11時。

その彼(以下、「男性A」が現れました。

徒歩で現れたのですが、そんなわけはないでしょう。

確かに忘れ物といっても、手に持てる程度の物のようです。

どうでも良い物なのでしょうが、依頼会社が何やかんやと言って取りに来させのでしょう。

男性Aは寮を後にすると、暫く歩きましたが、案の定、途中の時間貸し駐車場にトヨタ ウィンダムを停めていたのです。

車に乗って新宿方面に走行。

その後、中野新橋の駅近くの時間貸し駐車場に入って駐車しました。

男性Aは降車して、近隣の某マンション内に入り、一階の突き当りの部屋に姿を消したのです。

紛れもなく、彼ら実行部隊の潜伏先でした。

そのマンション付近で、僕らは依頼会社の無謀な要請で24時体制の張込みとなりました。

動けば尾行で行動確認をし、最終目的は街宣車で喚き騒がせた首謀者を割り出す事です。

毎日、毎日、そのマンションの部屋には若い男性らが出入りします。
そして、共通している格好が、黒の上下スーツに黒ネクタイ、そして黒縁のメガネ…さらに、何故か皆んな短髪か坊主頭。
彼らが道端で一同を会していると、一種独特なムードを漂わせます。

とにもかくにも24時間体制ですから、外注調査員を雇い、交代で監視態勢になりました。

ところが連日の調査で、夜中はまず動かないという事もわかりました。

僕も連日の調査で疲れていたので、外注調査員U君に夜中の監視を頼み、僕は秋葉原のワシントンホテルを予約して少し休む事にしたのです。

 

秋葉原の複合オフィスビル『UDX』の地下駐車場に車を停めて、秋葉原ワシントンホテルにチェックイン。
部屋に入って疲れた体を按摩を呼んで揉みほぐし、やれやれと眠ろうとしましたが、
その前に、一応はU君に状況を確認しようと電話をかけました。

 

時刻は日付が変わり、夜中の0時を回ってましたから、何もあるわけはないのです。
今まで、彼らが0時過ぎに活動を始めたという事はないのだから。
しかし、どうした事かU君は電話に出ない。

 

果たして、車の中で寝てしまったという事もあるし、それもやむを得まい。それともコンビニのトイレにでも行っているか…
U君の事だ。着信に気がつけば必ず連絡してくるはず。そう思って、体をベッドに横たわしてはいるものの、寝ないようにしていました。
30分が経っても連絡がない…

 

突然、謂れもない不安感に襲われ、“まさか…”と立ち上がり、服を着替えてホテルの外に飛び出しました。
まっすぐUDXの駐車場に向かい、車を出して中野新橋に向かう。
その間も、U君の携帯を呼び続け、コールはするが誰も出ない。

 

“何かあったな…”
それは、間違いない位の直感でした。

 

靖国通りから甲州街道に向かう途中、僕の携帯が鳴り、その着信表示はU君の携帯番号ではないけれど、それがU君だとわかりました。
公衆電話からの着信…
『大丈夫⁉️』僕はU君に言いました。
『いったい、何があった⁉️』

 

U君は、声を震わせて言ったのです。
『すみません、突然囲まれて…』

 

U君によれば、気がついたら奴らに車を囲まれて、一瞬の隙をついて車から飛び出し、彼らが追ってくるのを振り切って走り、タクシーに飛び乗って、隣の中野坂上まで逃げたという。その時に、携帯は勿論の事、撮影機材も全て車内に置いてきてしまったらしい。

 

『バレてんのか⁉️』

 

おそらく、ヤサを割るまでは気がつかなかったはずですが、その後の連日の調査監視で勘付かれた可能性が高い。
僕は中野坂上に彼を迎えに行って、そのまま中野新橋に向かいました。
彼は、あまりに慌てて飛び出したので、車のドアロックはしたはずだか何とも言えないという。

 

僕は中野新橋の近くまで来て、少し離れたところに車を停めて、車内にU君を残し、彼から彼の車のキーを預かって、ひとりで彼の車を回収に向かいました。
もしかしたら、まだ周辺に奴らがいるかも知れない。
僕は慎重に、周囲を確認しながらゆっくりと車に向かいました。
普通なら、必ず戻ってくると踏んで、待ち伏せをしているはず…

 
(vol.3 につづく)

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