~やっぱり浮気をしてたのね?vol.6~
中野坂上で電車を下車し、改札を通過して地上に出ました。
甲州街道沿いの歩道を歩く彼。
ところが、少し歩いたところで突然立ち止まり、通り過ぎる人の顔を全て確認しているのです。
ちょうど、彼の後ろを追尾していた調査員は立ち止まる事はできず、彼の前を通り過ぎ…振り向く事さえできない。
僕は、というと、実は道路の反対側に渡って平行して尾行していたので、彼の様子をずっと見る事ができました。
彼は途中立ち止まり、道路側に体を向けたまま、左右を見回し、相変わらず通り過ぎる人の顔をチェックしています。
彼と同じ歩道を尾行していた調査員は、一人残らず一歩も前に進めず…
と、その時、彼は道路に向けていた体をくるりと反対側に向き返し、路地へと入って行ったのです。
細く、暗い路地で、このまま行かれたら失尾する…
他の調査員は気が付いていない。
僕は道路の反対側で、車がビュンビュンと走っていました。
仕方がなく、僕は道路に飛び出して、走ってくる車に両手を上げてスピードを落とさせ、一気に道路を渡りました。
間一髪…。
薄暗い路地の次のカーブに差し掛かる彼が見えました。
けど、一気に彼との距離を縮めないと、さらにどこかの路地に入られたら、彼の行き先が分からなくなってしまいます。
僕は極力、足音をさせないように走りました。
そうは言っても、あれだけ警戒行動をとった彼です。
角を曲がった瞬間に、隠れて立ち止まっている…なんて事もあり得るし、正直、この時も頭をよぎりました。
果たせるかな…
角に差し掛かり、走る速度を落として曲がると、
そこに彼はいませんでした。
何故なら、彼はさらに次の角に差し掛かっていたからです。
そして…僕は、またダッシュ…。
何とかカンとか…彼に気づかれないまま追えていました。
ところが、次の角を僕が曲がると、
もう、そこに彼の姿はなく、その先の道にも、彼の姿は微塵もありませんでした。
(こんなに必死に追ったのに…?)
この時の落胆ぶりったらなかったですね(笑)
でも、落胆していたのは、ものの数秒でした。
僕には、彼の行き先を特定するための自信があったからです。
(8/24頃 掲載につづく)