東京国際調査事務所は、その母体である株式会社ティービーアイの海外事業部として、多くの海外調査を行ってきました。
あくまでも、お客様は日本人が基本です。その理念は、日本人と海外在住邦人または日本企業などから依頼を受けた、日本のために海外まで行って調査サービスを提供するというもの。
特にタイ王国は、数多く依頼を受けていて得意とする国です。
時に、タイの調査が終わって日本に帰り、すぐに日本で調査、そして今度は他の国に…何ていう、結構ハードな日々もありました。
今回のお話は、そんなハードな日々のお話となります…
こんな依頼ありました「骨折すると痛い」1
日本では、まあ普通に浮気調査だ、企業調査だ、やれ盗聴器の発見だと、バタバタとしていた…そんな時、バンコク支局より企業調査が入った。
通常であれば、バンコク在住の日本人調査員とタイ人調査員がチームで調査をするのだけど、この時は私が別件でタイの法律事務所の弁護士と会わなければならない用事があって丁度バンコクにいる日であったので、私も現場に出る事にした。
依頼の内容は、ライバル企業の日本企業タイ支店が、近年、依頼会社の取引先を狙って営業活動を展開しているとの話で、その事実確認をして欲しいというものだった。
動くのは全て車。私たちは調査車両とバイクを用意して調査を行った。
この時、バイクはタイ人調査員のノットホム(仮名)が担当して、私とバンコク支局の日本人調査員K氏は車を担当。
開始場所は、当然の事だが、ライバル企業〝NC設備サービス(仮名)のオフィスビルから。
タイに行かれた方は、ご存知の方も多いかも知れないが、タイは都市であるバンコクでも日本と比べ物にならないくらい道が悪い。
バイクなど、一歩間違えると事故に繋がる。凸凹と言っても過言ではない。
NC設備サービスの日本人社員は三名。このうち、誰を尾行するかは、こちらの判断に任されていた。
私たちも、動きや役職の雰囲気から尾行対象を決めようと思っていたのだが、最初はとにかく車で出た順から追うしかない。
朝8時半頃から張り込みを開始すると、すでに事務所内には明かりが点いていて、誰かしら出勤している様子だ。
タイも、会社の始まりは日本と何ら変わらない。
そのうち、日本人らしき人間たちも出社し始めた。
「さて。今回の案件は、そんなに大した難しさはないですね。」
私がK氏に敬語で話すのは、K氏が私より年配者で、社会の大先輩だからだ。
「そうだね。」K氏が言った。「何か特段の問題さえなければ。」
張り込みをして、2時間ほど経った10時半少し過ぎ、日本人社員と思われる男性がタイ人女性と勤務先を出た。
「出ましたね。」私は言った。
「あのタイ人の女性と出かけそうです。カバンも持ってるし、まずはこの二人を追いましょう。」
そう言ったが、二人は駐車場には行かない。
「あれ。もしかして。」K氏が言う「運転手付きの車に乗りそうだね。ほら、ビルの車寄せに行きそうだ。」
「そのようですね。」私はそう言って、車を少し脇に寄せて、その状況から撮影を始めた。
その間にK氏がバイク要員のタイ人に連絡をして、いつでも追えるように指示をだしてくれていた。
車寄せに黒のBMW車が現れた。
NC設備サービスの社員と思われる男女は、後部座席のドアを開けて乗り込む。
このまま、すぐには追えない。BMWが敷地内を出る事を確認して、私も車を発進させた。
敷地内を出ると、丁度、一台の車がBMWと私たちの車の間に割り込んだ。
「タイミングが良いです。一台間に入ってくれましたよ。」
「うん。丁度良いね。」とK氏。
私たちの車に隠れるように、ノットホムのバイクはついた。
信号待ちで、どうやらBMWは大通りを右折するようだ。
そこに、脇道から一台のワゴン車が出て来て、私たちの前の車の前に割り込んだ。
「ああ…困ったな、中二台になってしまった…。」
とはいえ、最悪はノットホムがいるから大丈夫か。
スムーズに行くと思っていた。あんな事がなければ…
~次回につづく(2021/03/14頃 掲載予定)~