~危険な依頼vol.3~
U君の車の周りには誰もいない。
深夜であるし住宅街だから、人影があれば気配でわかるはず…
(潜んでんのかな…)
U君の車が停めてあったのは、ちょうど貴乃花部屋の近くで、その位置から彼らのヤサがあるマンションの出入りが見えます。
探偵小説なんかだと、こういう時に決まってドジな主人公が、悪役にとっ捕まるシーンがありますね。
僕は、そおっと近づく…
ドジな主人公にはなりませんでした。
不思議な事に、奴らは潜んでおらず、誰もいませんでした。
車のドアロックはされいて、カメラもU君の携帯も無事でした。
そうとなりゃ、すぐに退散しないと。
僕はエンジンをかけ、その場をすぐに離れ、U君のもとへ戻りました。
そんなこんなで、もうこの場所での監視は厳しい…
元請けに報告して、この後はどうするかという話になりましたが、
どうしても依頼会社は諦めない。
そりゃそうですな…何十億という大金がかかってるのです。
また、その依頼会社も、ちょっと変わった会社だし、社長っていうのが超ワンマンらしい…
元請け曰く、「お金を、お金と思ってないような人たちだよ。そのくらいお金を持っている。」と。
なので、いろんな案がでました。
近くでひと部屋借りて、そこから監視できないか、とか。
本気で探しましたね。
ただ、運悪く良い場所が空いてなくて、それは叶いませんでしたが…
監視が厳しくなりましたが、ここまで24時間体制で約2週間ほどやりましたので、いろんな事がわかりました。
彼らがよく使う車が白のクラウンで、調べてみたら車検が切れている。
要するに、そんな車を平気で走らせているような連中です。
それから、僕らは依頼会社の言うがままに、色んな調査をしました。
たとえば、奴らのの本拠地は愛知県の某所で、奴らの仲間とされている、ある人物の実家もあって、そこでその人物の行動確認をするとか…
でも、そこにはその人物は帰っていないという事も調査途中にわかったのですが、それでも依頼会社は24時間1週間監視しろと…めちゃくちゃです。
でも僕らとしては、依頼会社がやれというのだから、売り上げにはなるし、特に何の問題はありませんでした。
なかなか手だてが見つからないまま、1週間ほど久しぶりの休暇でした。
まあ…休暇とは言っても調査が珍しくないだけで、レポートに追われます。
余談ですが、その頃っていうのはメチャメチャ忙しくて、案件が1日に3件も4件もかぶってました。
探偵事務所っていうのは、今も全国に5000~6000社近く公安委員会に届け出を出していても、殆どが皆んな一人です。
横の繋がりでもって、協力してやっているのです。
その当時の僕も然りで、専属はいましたが社員ではありませんでした。
なので、レポート(調査報告書)が大変でした。
文書によるレポートが終わると、デスクの上に案件ごとの画像を並べるわけです。
そして、今度はレポートに記載された対象者の行動記録時刻と、その画像が間違っていないか確認して、1分でも違ったら、全て訂正していく作業をするわけです。そりゃぁ…ひとりでは大変でした(笑)
話がずれてしまいました。
そのレポートをやっている最中に、また元請けから依頼会社の意向を伝える連絡が…
業を煮やした依頼会社は、大もとの人物の行動確認をしろと言ってきたらしいのです。
“大もと”とうのは、依頼会社と係争中の相手方の社長です。
世田谷区の某所に、その社長の自宅がありました。
ある日の早朝、僕は車で、他外注調査員を一名雇い、彼にオートバイをお願いしました。
確か、朝は6時半頃の開始だったかな…
大変、狭い路地が多くて、張込みに苦労した記憶があります。
大もとの人物…仮にY氏としておきましょう。
Y氏宅は、なかなかの豪邸です。
7時半頃にガレージのシャッターが開き、中からイタリア製の車が出庫しました。
ぼくらは、車とバイクで尾行します。
Y氏の車は、真っ直ぐ新宿方面に走行していきました。
なんてことない尾行です。
新宿の高層ビルに到着して、地下駐車場に入っていきました。
Y氏の会社があるビルです。
車で動くのは間違いないので、僕らは駐車場の出入口で監視を継続しましたが、
まさか、この後に起きる事を全く予想していませんでした…
(vol.4(5/21頃掲載予定) につづく)