こんな依頼がありました。Part❺

こんな依頼がありました。Part❺

~情報漏洩や背任行為は、ダメ‼️~

 

今でこそ、個人情報保護法や情報セキュリティーが企業にとって不可欠となっていますが、以前は、この手の依頼が非常に多かったです。それなのに、今でも無くなりませんね。
ベネッセの顧客情報の漏洩なんかは、まさに最近の事です。
僕は数年前に、ある経済報道番組の特集で取材を受けまして、テレビでその生々しい現場をお見せした事があります。
その際、コメンテーターがこんな事を言っていました。
『自分が扱う物が企業にとってどれだけ重要な事なのか…
それには、扱う人間たちに見合った報酬を企業が支払うなり、そういう事が必要だと思いますね。』
と…。
確かになるほど…と思うところですが、僕が今まで対象者を調査してきたところでは、そういう考え方が余計に情報を売って金にしようという人間を増やすと思いましたね。
報酬を与えても、減るわけではないのです。
要は、その人間の質によるのです。
人間性とでも言いましょうか…
だってそうでしょう。
やらない人間は絶対にやらないのです。
これは報酬云々ではなく、その人の質である事がわかります。
そういう人間を子供の頃から育てる教育こそが、背任行為を防ぐ近道だと思うのです。
さて。今回は、ある大手ゲームメーカーの取締役のお話です。
この男性Aは当時50代前半の、依頼会社のキーマン的な存在でした。
ある日、その会社を辞めて独立し、A社を立ち上げました。
当然、依頼会社とは同業です。
この事そのものには、特に問題はないのですが、マズイのは依頼会社の新プロジェクトや新システムを知り尽くしてますし、世の中に公開される前に、コピーされてしまう可能性がある事です。
その疑いが浮上したのは、彼が辞めた後で、少しずつ依頼会社の優秀なエンジニアが、彼の後を追うように、ひとり、ふたりと辞めていった事でした。
依頼会社が危惧しているのは、この社員らが、会社の資料を持ち出して、彼の立ち上げた会社に集結するのではないか…という事。
彼からすれば、年も50にして自らの会社を持ちたい、という気持ちであっても、
ついてくる人間にあるのは、出世欲…そして金銭欲です。
みんな、20代や30代前半くらい。
特にお金というものに執着する年齢です。
彼を含め、対象者が全部で8人いました。
既に依頼会社を辞めた者もいれば、まだ辞めずに社内にいる者もいます。
果たして、彼との共謀の事実は⁉️
対象者が多かった事もあり、調査も同業他社も合同で、ぼくの方からは6名の調査員が参加しました。
うち、1チームは、メインの彼を受け持ち、朝、出勤するところからスタートしたのです。
A氏は、神奈川県某市の閑静な住宅街に戸建住宅に住んでいました。
毎朝7時くらいに自宅を出て、神保町のA社に出社します。
クリエイティブな仕事なので、ビシッとスーツというより、チノパンにジャケットというスタイル。
この調査を始めたのは、確か残暑が残る秋ころだったと記憶してます。
秋は雨が多い月。
張込み中、土砂降りにやられて、ビショビショなる事が多かったです(笑)
A氏に関心したのは、A社に出社したあと、毎日毎日、営業に出るのです。
しかも、ひと駅ふた駅くらいは、全て歩きで行きます。
最初は、(経費節減なのかぁ…?)くらいに思っていたのですが、
実は、それだけでなく、自分の会社の2キロ~圏内にどれだけの取引先になる可能性がある会社があるが、自分の足で確認していたのですね。
毎日、毎日です。
既に、調査を開始して間もない頃から、依頼会社を辞めた者たちがA社に出入りしている事は判明していました。
その後、依頼会社では、さらに辞表を提出する人物が出てきて、
依頼会社は、その辞表を保留とし、その後の彼らの行動確認をする事になったのです。
彼らは、辞表を出した後、有給を使って会社を休み、
有給中、やはりA社に集結していきました。
会社を辞めて、前職と同業種に就職する事は、別に問題はないかと思います。
問題は、その“形”に問題があります。
まるで、コソコソと、しかも今の彼らのスキルがあるのも、勤めていた会社があってのこと。
みんな、勘違いするんですね。
全て自分の能力だと。
それまで、その会社から給料をもらい、社会保険など守ってもらってたのに…
そして、その会社がお金をかけて育てた人材を自分が独立する会社に引き抜く。
それは楽ですよね。自分が全く知らない人間を採用するより、以前の部下の方が、何よりも教育する必要がない。
さらに、彼らは今まさに開発している最中のものに携わっているわけで、一石二鳥です。
これは、紛れもなく背任行為であり、一種の産業スパイです。
僕らは、毎日毎日、コツコツと側面的に彼らの行動を記録し、またひとり、またひとりと、依頼会社を辞めてA氏のA社に集結する姿を撮影しました。
A氏は、時にはそういった人たちに食事を振る舞う事もしました。
そして、まだ依頼会社を辞めていない社員でさえ、A社の会議室で会議に参加している。
そんな姿さえ、、運良く外部から撮影できました。
調査の全過程が終了したのは12月に入ってからだったと思います。
実に、4ヶ月に及びました。
これだけの期間がかかったのは、依頼会社からの指示でしたので、僕らが意図的に延ばしたわけではありません。
それだけ、依頼会社としては社運がかかっていた証拠収集の調査たったのでしょう。
結果として、A氏がどうなったかは判然としませんが、
その後、たまたま僕がA社があったビルの前を通った時、そのビルにA社はありませんでした。

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