~危険な依頼vol.7 最終回~
また、奴ら関係の仕事…
僕らの仲間内では噂になっていましたから、パートナーをオファーしましたが、殆ど皆んなに断られました。(笑)
「すみません…その案件は勘弁して下さい…。」と(笑)
唯一、断らず協力してくれたのが、この業界の大先輩でもあり、飲み友でもある、A調査事務所のO氏でした。
まぁ…仕方がないでしょう(笑)
誰だって、リアルにリスクを冒すような仕事はしたくないでしょうし。
まさに、リアル過ぎましたから(笑)
で、翌日。O氏と愛知県の某地裁で張込みを開始。
法廷が閉廷して、間も無く、依頼会社の社長や、相手方の人物(以下、「男性S」)とその弁護士と思われる人物らが出て来ました。
裁判所から、男性Sと弁護士はタクシーに乗車しました。
僕らはタクシーを尾行。
タクシーは、割と近くの最寄駅のロータリーで停車して、男性Sだけが降りると、弁護士は降車しないで走り去りました。
男性Sは単身で、ゆっくり歩いて行きます。
僕は車を降りて、ひとり徒歩尾行になりました。
この後は、何なく彼らの潜伏先は割れました。
ある場所の、古い団地でした。
やれやれ…と思いきや…
依頼人が無謀なのを忘れていました。
そう…またです。
24時間、監視しろと…(笑)
まぁ…仕方がなく、良い監視場所を探そうと、車で団地の周りを車でゆっくり走りました。
この日はO氏に運転して頂いていたので、僕は助手席でした。
少し走ったところで、路地を通り過ぎた時、
(あれ⁉️)と思い、
「Oさん、申し訳ないですが、少ぉーし、バックしてもらえます❓」
と頼みました。
O氏がブレーキを踏んで、バックギアに入れて、バックすると…
「やっぱり…?」
びっくりすると同時に笑ってしまいました。
その路地にあったのは、
あの、ウィンダムだったのです。
昨日の今日で、本当にタイミングが悪すぎ(笑)
とはいうものの、これで殆ど点と点が線で繋がった感じになりました。
今までの一連の出来事が、今までは繋がっている事はわかっていても、実質的にはバラバラでしたから。
結局、朝まで監視して愛知県での仕事は終わりました。
そして、東京に帰ってから、僕に降りかかっていた問題が、
意外にも、呆気なく幕を下ろすのです。
東京に帰り、そのまま自宅に帰宅しました。
妻子が帰って来ていて、少し心配でしたが、翌朝も周囲を見回しても奴らがいる様子はありませんでした。
車に乗って、事務所に向かいましたが、誰かが尾行する様子もなく、あのウィンダムの姿も見当たりませんでした。
事務所に着いて、事務所の周りも注意深く見てみましたが…
とりあえず、大丈夫な様子…
(何なんだ、この感じ…?)
すると、珍しく妻から携帯に電話が。
何かと思ったら、奴らのアクション第二弾…
一通の手紙が。
正確には、手紙というより、
“内容証明郵便”
あの、Y氏からでした。
内容文面は、大かた、次のような内容です。
『貴殿は、◯◯月◯◯日 午前◯時頃から私の後をつけ回して、私が貴殿を制止して、それを問い正そうとすると、貴殿は狂ったように交通違反を繰り返し逃げ切りました。
私の後をつけ回した理由と依頼人を直ちに教えなさい。さもなくば法的手段にてしかるべき処置を取ります…云々。』
正直…何だこれは…❓?と拍子抜けでした。
まあ…内容証明郵便などは何の効力もありませんから、要するに“忠告”って事でしょうね…
けど、法的になんてやるわけがないし、仮にやったら、Y氏が笑い者になるだけ。
だって、そうでしょ?
新宿通りなんざ、仕事でしょっちゅう走っている。それだけで、“つけ回した”などと言われたら、国道だって走れやしませんよ(笑)
頭の可笑しいオッさんと思われるだけだす。
ただ、そのくらいしか、できなかったのでしょう…
元請けの社長にも見せましたが、呆れてポカーンと口を開けてましたね。
結果として、奴らを調査する依頼はあの日以来来なかったので、Y氏の内容証明郵便が効いたかのような終わり方になりました。
けど、まぁ…終わってくれて良かったです。何事もなく無事に。
何よりも妻子や家族には何もなかった。それが何より。
ただ、妻が今頃になって、
「そう言えば、車がうちの駐車場に停まってた!
あんたが帰って来たのかと思って気にしなかったんだけど、よく見たら別人。そしたら、すーっと走っていっちゃって…」
これ、僕が初めて奴らに尾行される、ちょっと前の話だそうです。
ってか…旦那の車と奴の車くらい見分けろっつぅの…?
「だって、」妻は言う。
「車なんか、みんな同じに見えるもの‼️」
(おしまい?…完結)