もう、何が何だか分からなくなってきた。
依頼を受けた当初、状況から言って、ただならぬ事態を予想した。
自殺の可能性を一番に考えたが、そのうち暴走族との駆け落ち説…しかも◯◯連合との関わりや、昔、スポーツカーに乗せてくれたという男など、とにかく色んな説が出た。
※画像は実際の物とは関係ありません。
その度に振り回されるように、あっちへ行き、こっちへ行き…。
けど、何か忘れてやしないか?
そう…いま現在も含め、失踪した時から状況を。
まず確かな事は、あらゆる私物を置いて失踪したという事。それも依頼者によれば、、
旦那だが、カバンに一纏めにされた状態で二階の部屋の片隅に置いてあったという。
カバンの中身は、クレジットカード、銀行カード、預金通帳、印鑑、免許証、保険証などなど…。
◇ ◇ ◇ ◇
そして、パソコンの検索履歴に残っていた◯◯市への乗り換え案内…。
但し、これは私が発見したのではなく、依頼者である夫がパソコンで何か調べてやいないかと履歴を見て発見したものだ。
依頼の時に、その画面を印刷したものを、まず私に依頼者が見せてくれた。
この時点の状況で、◯◯市といえば“自殺の名所”を思い浮かべるし、一刻をあらそう気持ちから◯◯市に足を運んだ。
同市の警察署にも行った。町中、聞き込みもした。
けど、期間が経っているため人びとの記憶は曖昧…警察は全く相手にしてくれない。
そして、個人情報保護法という何とも理不尽な法律ゆえに、その壁を破る事はできなかった。
その後、彼女の昔使っていたガラ携のメール内容や登録された電話帳なども見たし分析のような事もしてみたが、これといって確かな情報は見つからない。
けど、考えてみれば、確かな情報は、いま述べた情報で、やはり◯◯市に行ったというのは間違っていなかったのではないかという気になった。
それは履歴もそうだが、それに付随して、彼女は失踪間際に、孫に「古い友人に会いに行く。」と言い残している。
古い友人…◯◯市は、彼女にとって縁のある、よく知る土地であるという事実。
◇ ◇ ◇ ◇
真実のキーワードをまとめてみた。
①所持品の全てを置いて行っている。
(物的なものを確認。)
②◯◯市への乗り換え案内を閲覧していた痕跡
(これは本当に本人が検索したものか否かは確かではないが、検索履歴が残っていたのは事実。)
③夫とは実はあまりうまくいってなった。
(実次女の話ぶりと、パート先の社長の証言。)
④古い友人に会いに行くと行っていた。
(孫の証言)
⑤失踪当時、何か苛立っていた。
(失踪直前、最後に会話を交わした本人の母親ことお婆ちゃんの証言。)
以上の事は、ほぼ確かな事である。
◇ ◇ ◇ ◇
それ以外、暴走族が云々、偏屈なオッさん、などなどは、全くもって想像でしかなく、真実かどうかなど誰にもわからない事だ。
私は、もう一度、◯◯市に行きたかった。
とはいえ、これ以上、◯◯市で何をしようというのか?そんなこんなのうちに、あれやこれやと既に依頼を受けてから一カ月を過ぎようとしている。
彼女が失踪してからは、すでに2ヶ月近く経っているのだ。ただでさえ薄れている人々の記憶は、さらに薄れているに違いない…。
そして、警察は全く相手にしてくれないのだから、自分では「ここに来ていたはず。」といくら言っても、警察とすれば「だから?」という話になってしまう。
けど、整理すればするほど、やはり◯◯市は頭のどこかに引っかかる場所だった。
このあと、どうするか…などと考えていた時、
思いもよらない事で、この失踪人捜索は幕を閉じ、私の仕事は終了する事となった。
なぜなら、彼女が見つかったのだから。
~Vol.⑬につづく(2019/09/01頃 掲載予定)~