~やっぱり浮気をしてたのね?vol.5~
僕らは翌日の土曜日に彼の自宅付近で監視態勢になりました。
とはいっても、非常に道幅が狭い住宅地なので、自宅の近くで張り込む事ができず、彼が最寄駅までに使う自転車に音を発する発信機を取り付けました。
これは盗聴器と同様の周波数を使用したもので、GPSのような発信機とは違います。
専用の受信機で、“ピッ、ピッ、ピッ…”という音を拾い、人間の耳には聴こえません。
なので、近づかないと受信機からは、“ザーッ”という音しか聴こえません。
僕らは、駅に向かう路地のコインパーキングに車を停め、彼が現れるのを待ちました。
午後4時ころ、微かに“ピッ…ピッ…”という音が受信機から聴こえてきて、どんどん“ピッ、ピッ、ピッ…”と音が大きくなってきます。
「来た ‼️」
どの路地から現れるか❓
思っている間に、僕らの車が停まっているコインパーキングの前をゆっくりて滑走して駅前の駐輪場方向に自転車に乗る彼が現れました。
彼は駐輪場に自転車を停めると、某駅の方に歩いて行きました。
この時期、たまたま某社の社長が会社で探偵調査部を作りたいというので、僕に調査技術を社員に仕込んで欲しいという依頼があって、まぁ…いわゆる探偵学校的な事をやっていて、その生徒さんたちにも参加させていました。
正規の調査員は、僕を含めて三名。生徒さんは二名です。
僕らと正規の調査員の二人が先頭になって徒歩尾行態勢になります。
生徒さんは、少し遅れて僕らの後から付いてきて、車両の調査員が僕とコンタクトを取りながら追跡態勢になるといったかたち…
彼は改札を通過して、新宿方面の電車に乗りました。
ほどなくして新宿駅で下車し、僕らも電車をおりました。
徒歩尾行なので、なんて事がないはずでした。
ところが、彼が思いもよらない行動に出たのです。
ホームから改札方向に階段を降りる直前に、突然立ち止まって後ろを振り返る。
後方から追尾していたベテランの調査員が、びっくりしたものの、当然、相手に気づかれぬように自然に通り過ぎます。
少し遅れて電車を降りた僕は間一髪、自然に電車を降りる人に紛れる事が出来たので、遠目から彼の動きを見る事が出来ました。
度々余談ですが、徒歩尾行の相手との距離っていうのは個性がでます。
対象者から割と近い人、若干遠い人…どちらも一長一短がありますが、どちらが良い悪いという事はありません。これは、その人の個性であり、性格だと思ってます。
彼は、立ち止まって振り返り、周囲を見回すような行動は取りましたが、調査員を特定してはいないと思われました。
少なくとも、僕はそう思ってました。
彼は、再び歩き出し、丸ノ内線乗り場方向に歩きます。
僕らも慎重に尾行しました。
丸ノ内線の改札を通過する際も、彼はチラッと後方を気にします。
それでも、普通に電車に乗り、僕らも全員、電車に乗る事が出来ました。
生徒さんたちには、とにかく、遠くから、僕らの姿が見える程度で付いてくるように言ってあったのですが、何とか電車に乗れたようでした。
中野坂上。
この駅で下車した後、彼の警戒行動は激しさを増すのです。
(8/17頃 掲載につづく)