とにかく、ニューヨークのど真ん中で対象者を見失ったのは痛恨の極み。
だからといって諦めるわけにはいかない。これで失敗しました、と日本に帰るわけにはいかないからだ。
情報を何とか得なければ。では誰から情報を得れば良いのか?これはもう、依頼者である奥さんしかない。
日本に連絡をして、状況を説明したところ、奥さんに心当たりがあると言う。
それは、彼がいつもニューヨークに到着すると、必ず同行者と行くレストランがあるというものだった。
今回の状況といい、これは間違いなく、そのレストランに行ったのだと確信した。
私たちは奥さんにレストランの名前と住所を聞いてそのレストランに急行した。
果たせるかな。本人を見つける事ができるか!?
◇ ◇ ◇ ◇
運のツキがない時というのは、とことんツキがないものだ。何と、そのレストランがこの日に限って臨時休業…
レストランの名前を間違えたのか。いや、似たような名前のレストランがあって、それで私たちが間違えて…
はたまた、これは奥さんがレストランの名前を間違えたのでは?などと考えたりもしたが、そんな事をやってうちに食事を終えてホテルに帰ってしまったら、という事に気がついた。
やむなく、ホテルに戻り張り込みをする事にした。
私たちがホテルに戻ったのが21時頃。彼らが戻ってくるのには少し早いだろう。
「どっちだろう?」私は呟いた。「既に戻ってしまっていたら、これ何時まで監視しようか…」
「まだ戻ってないと思うけどね…」そうH君は言うが、気休めにしかならない。
◇ ◇ ◇ ◇
その時、遠くから車のヘッドライトが見えた。
「あれ…どうかな?」
「ワゴン車だね。」
大きさも、色も彼らが乗って行った、あのワゴン車に似ている。
「来た‼︎」
ビンゴだった。
ワゴン車はホテルの前に停車して、スライドドアが開いた。
ひとり、ふたりと車から降りてくる。その中に本人はいた。
「いた。いた。」私は言った。「良かった。彼らと食事にいっただけだ。」
推測に過ぎないけれど、同行者は本人の部下だろうから、流石に女を同席させたという事はないだろう。
「良かったけど。」H君は言った。「…また、会えなかったね…」
(早く…マンハッタンで会いたい…。)
~次回につづく(2020/01/12頃 掲載予定)~